情報の照合や再計算、証憑の収集…こうした出口の見えない手作業を何時間も続けていると、うんざりしてきますよね。こうした作業をなくして、監査人がより付加価値の高いタスクに集中できるようにさせてくれるのが、監査の自動化です。この革新的なアプローチは、監査の在り方そのものを変えつつあります。
この記事では、監査の自動化の基本を解説し、主要なツールの種類やメリット、そして課題について掘り下げます。
目次:
監査の自動化とは?
監査の自動化とはその名の通り、監査業務をより効率的に、そしてシンプルにするために自動化ツールを活用することです。監査人が膨大な資料に目を通す代わりに、自動化ツールがデータ入力、証憑突合、取引の分析を行います。これにより、監査人は大幅に時間を節約でき、より戦略的な業務に集中できるようになります。
7つの主な監査自動化機能
自動化ツールは、資料分析からチームの業務連携を強化するものまで、幅広いニーズに応じた機能を提供します。ここでは、監査プロセスにおける主な課題を解決する7つの機能をご紹介します。
- 予測分析: 過去からリアルタイムまで財務データ全体を自動で分析し、データのパターンからトレンドを把握、さらにはリスク評価、潜在的な問題を事前に特定することまで可能です。
- ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA): RPAは、証憑突合や情報の抽出といったルールベースの繰り返し作業を自動化します。
- レポート作成: 複雑な検証結果を簡潔で分かりやすくまとめ、一貫性と高い品質を保ちながら監査レポートや要約を自動で作成します。
- ワークフロー管理: ワークフローやタスクの割り当て作業を自動化し、ひとつのプラットフォームに作業場所を一元化することで、監査の計画や実行を効率化します。これにより、監査の進行状況をより簡単に管理できるようになります。
- クラウド: いつでもどこでもアクセス可能なクラウドベースのプラットフォームは、リアルタイムでのチームメンバーとの作業やデータの共有を容易にします。作業に変更が加えられた場合、その内容が自動で反映されるため、地理的・時間的な制約を解消し、スムーズな業務連携を実現します。
- 資料管理: 資料の保存、検索、共有プロセスを自動化し、コンプライアンスの遵守とファイル紛失リスクの低減を実現します。さらに、資料のバージョン管理を行うことも可能です。
- PBC(Prepared By Client)ポータル: PBCとは、Prepared By Client(クライアントから提供された資料)の頭文字をとったものです。PBCポータルでは、クライアントからの資料提出状況をリアルタイムで追跡し、提出された資料を読み込み、要件を満たしているかのチェックまで自動で行えます。提出リクエストも自動化することで、積み重なるメールのやり取りを排除し、スムーズなコミュニケーションを実現します。
AI: 監査自動化を変えるゲームチェンジャー
これらの機能の中で、予測分析や異常検知、パターン認識は機械学習技術に依存しています。
あらゆるテキストの認識・分析やデータ抽出を含む機能は自然言語処理、高品質な監査レポートの生成には自然言語生成の技術が使用されています。
これらの技術はすべてAI(人工知能 - Artificial Intelligence)の一部で、監査業務自動化の中心的な存在です。
AIは、リアルタイムでのコンプライアンス対応を可能にする継続的監査や、高度な情報分析による一瞬での取引の正確性検証、そして潜在的な課題を事前に察知する予測型リスク評価など、単純なルールベースの自動化を革新し、新たな業務効率化の可能性を切り開いています。
- AIがどう監査業界を革新しているのか、詳しくはこちらをご覧ください。
監査自動化のメリット
監査を自動化することで得られる恩恵は多岐にわたります。その中でも、監査プロセス全体に大きな影響を与える主なメリットを見ていきましょう。
- 業務効率向上: 最も明白なメリットです。単純な繰り返し作業を効率化し、情報抽出や照合、サポート作成などのプロセスを瞬時に完了できるようになることで、監査人は戦略的かつ付加価値の高い業務に集中できるようになります。
- コスト削減: 自動化により、手作業による多くの労力を要するプロセスが削減され、より迅速に費用対効果の高い監査結果を得ることができるようになります。
- 業務精度の向上: 人為的ミスが発生しやすいタスクを自動化することで、情報分析や報告の精度を向上させます。これは監査業務全体の品質向上にもつながります。
- 業務の一貫性向上: 自動化システムは、決められたルールや手順に基づいて作業を行うため、タスクやレポートのどれに対しても同じ監査基準を正確に適用できます。これにより、業務の一貫性を保つことができます。
- リアルタイムでの業務連携: リアルタイムで検証状況やレポートにアクセスできるツールを利用することで、関係者全員が常に最新情報を把握できます。その結果、迅速かつスムーズな意思決定が可能になります。
- 監査証跡の確保: 自動化ツールはすべてのタスクの実行過程や変更を詳細に記録できるため、透明性のある監査証跡を取得できます。これにより、コンプライアンスの遵守が保証されるだけでなく、問い合わせへの対応やレビュープロセスも簡素化できます。
- リスク管理: 異常やリスクのある箇所をリアルタイムで検出できるため、問題が大きくなる前に対処できます。
- セキュリティとデータ保護: 強力な暗号化やアクセス制御、クラウドベースのシステムにより、機密性の高いデータを安全に取り扱うことができます。
- 隠れた洞察の発見: 自動化ツールにより大量のデータを分析することで、手作業では気づきにくいパターンやトレンドが発見できます。
監査自動化の課題
監査の自動化には多くのメリットがありますが、同時に課題も存在します。これらの課題を克服しないと、自動化の効果は十分に発揮できません。
- システム間の統合の難しさ: 自動化ツールを既存システムに統合するには、技術的な複雑さが伴います。統合方法を徹底的に調べ、柔軟性のあるツールを選ぶことが重要です。
- DataSnipperは、Excelのアドインとして使用できるため、導入が非常に簡単です。
- ユーザートレーニング: 自動化ツールを導入するには、ワークフローの構築やユーザートレーニングにリソースを割く必要があります。適切な導入サポートがなければ、ユーザーがツールを効果的に使いこなせず、期待される効果を十分に引き出せないことも。そのため、ツールを提供する会社の専任カスタマーサポートチームが、ニーズに応じたトレーニングや実践的な支援を提供することが欠かせません。
- 変化するニーズへの対応: 自動化ツールを維持するには、定期的なアップデートやトラブルシューティング、そして組織の成長や変化に合わせた調整が必要です。これらに柔軟に対応できるソリューションを選ぶことで、将来的なニーズにも対応可能な自動化環境を構築できます。
効果的なチェンジマネジメント戦略については、こちらの記事もご参考ください。
まとめ
監査の自動化は単なる技術のアップグレードではなく、現代の監査業務に欠かせない必須要素です。
プロセスを効率化し、新たな洞察を提供することで、チームは戦略的な業務に集中でき、全体的な監査の質も向上します。
導入にあたっては、システム統合やユーザートレーニングといった課題が伴うものの、適切なツールと導入戦略があれば、それらを成長の機会へと変えることができます。
新しい監査の未来はもう動き始めていて、それを支えるのは自動化の力です。
監査の未来について、さらに詳しく。
eBook「監査はインテリジェント・オートメーションの時代へ」では、過去10年間の監査業界のイノベーション(またはその欠如)と、インテリジェント・オートメーションと共にある、これからの監査のあり方を探っています。ぜひダウンロードして、さらに詳しくテクノロジーと監査の関係性について学んでみてください!